猫を飼い始めると必ず直面するのが「去勢手術はどうする?」という問題です。特にオス猫の飼い主さんは、スプレー行動や大きな鳴き声に悩まされて手術を検討する方が多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、繁殖の予定がないなら去勢手術はしたほうが良いというのが現在の獣医学における一般的な見解です。ただし、メリットだけでなくデメリットも存在しますので、両方をしっかり理解した上で判断することが大切です。
この記事では、猫の去勢手術のメリット・デメリット・費用・適切な時期・術後ケアまで、必要な情報をすべてまとめてお伝えします。

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去勢手術のメリット
1. スプレー行動の予防・改善
オス猫の一番の問題行動といえばスプレー(マーキング)です。壁や家具に強烈な臭いのおしっこを吹きかける行動で、一度始まると家中が臭いに包まれてしまいます。
去勢手術を行うと、約90%の猫でスプレー行動が改善するとされています。ただし、すでにスプレーが習慣化してからだと効果が出にくいこともあるため、早めの手術がポイントです。
すでに吹きかけられてしまった場所は、ニオイが残っていると同じ場所を繰り返し狙われがちです。ペット用の消臭スプレーでこまめにリセットしておくと、被害の拡大を抑えやすくなります。
2. マウンティング・攻撃性の低下
ホルモンの影響によるマウンティング行動や攻撃的な行動が軽減されます。多頭飼いの場合は猫同士のケンカが減ることにもつながります。
3. 脱走リスクの軽減
未去勢のオス猫は、メスを求めて脱走しようとする衝動が非常に強いです。去勢手術を行うと、この衝動がかなり抑えられます。
4. 病気の予防
- 精巣腫瘍:精巣そのものを摘出するため、術後に精巣腫瘍が発生することはありません
- 前立腺肥大:加齢に伴う前立腺のトラブルを予防できます
- 猫エイズ・猫白血病の感染リスク低下:ケンカの減少により、咬傷による感染リスクが下がります
5. 鳴き声の軽減
発情期のオス猫の鳴き声は想像以上に大きいです。夜中に大声で鳴き続けて、飼い主はもちろんご近所にも迷惑をかけてしまうことがあります。去勢手術で発情がなくなるため、この問題は解消されます。
6. 不幸な命を増やさない
日本では毎年多くの猫が殺処分されています。環境省の統計(動物の愛護と適切な管理)によると、殺処分数は年々減少していますが、それでもゼロにはなっていません。繁殖を管理することは、不幸な命を増やさないための飼い主の責任です。

去勢手術のデメリット
1. 太りやすくなる
去勢手術後はホルモンバランスの変化で基礎代謝が低下し、同時に食欲が増加する傾向があります。手術前と同じ量のフードを与えていると、ほぼ確実に太ってしまいます。
対策:去勢後用のフードに切り替える、食事量を15〜20%程度減らす、適度な運動を心がけることが重要です。
2. 全身麻酔のリスク
手術には全身麻酔が必要です。健康な猫であれば麻酔のリスクは非常に低いですが、ゼロではありません。特に心臓に問題がある猫や高齢猫は、事前の検査がより重要になります。
3. 手術費用がかかる
去勢手術には費用がかかります(後述しますが、1〜3万円程度)。ただし、病気の予防や問題行動の改善を考えると、長期的にはむしろコスト削減になるケースが多いです。
4. 繁殖ができなくなる
当然ですが、去勢手術を受けた猫は二度と繁殖できません。将来的に子猫を産ませたい場合は、手術前によく検討してください。
5. 性格が変わることがある
ホルモンの変化に伴い、性格が穏やかになることが多いです。これをメリットと捉える方もいますが、「やんちゃで元気だった性格が変わってしまった」と感じる方もいらっしゃいます。ただし、猫の根本的な性格が変わるわけではありません。
去勢手術の費用
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 去勢手術(オス) | 10,000円〜25,000円 |
| 術前検査(血液検査等) | 3,000円〜10,000円 |
| 術後の薬・エリザベスカラー | 1,000円〜3,000円 |
| 合計 | 15,000円〜35,000円程度 |
自治体やNPOによる助成金制度を利用できる場合もあります。お住まいの市区町村のホームページで確認してみてください。5,000円〜10,000円程度の補助が出るところが多いです。
去勢手術の適切な時期
一般的には生後6ヶ月〜1歳くらいが推奨されています。
- 早期去勢(生後4〜6ヶ月):最近は早期去勢を行う動物病院も増えています。スプレー行動が始まる前に手術できるメリットがあります
- 標準的な時期(生後6ヶ月〜1歳):体がある程度成長してからの手術です。多くの動物病院で推奨されています
- 成猫での手術:何歳でも手術は可能ですが、高齢になるほど麻酔のリスクが高まります
最適な時期はかかりつけの獣医師と相談して決めましょう。
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手術の流れ
手術前
- 事前予約:動物病院に連絡して手術日を決めます
- 術前検査:血液検査で健康状態を確認します(当日または事前に実施)
- 絶食・絶水:手術前夜から絶食(12時間前が目安)。水は4〜6時間前まで
当日は病院まで猫を安全に運ぶ必要があります。上開きタイプのキャリーバッグだと、診察台で猫を出し入れしやすく、通院のたびに役立ちます。
手術当日
- 朝、動物病院に猫を預けます
- 全身麻酔をかけて手術を行います(手術時間は15〜30分程度と短いです)
- 麻酔から覚醒後、状態を確認します
- 日帰りの場合は夕方にお迎え(1泊入院の場合もあります)
手術後
- エリザベスカラーや術後服で傷口を保護します
- 安静に過ごさせます
- 7〜10日後に抜糸(抜糸不要の場合もあります)
病院で貸してもらえることも多いですが、サイズが合わないと猫が嫌がります。自宅用に軽いタイプを1つ持っておくと安心です。

術後のケアと注意点
帰宅後24時間は要注意
麻酔の影響でふらつきや嘔吐が見られることがあります。高い場所に登らせないようにし、静かに過ごさせてあげてください。
傷口の管理
- 傷口を舐めたり引っ掻いたりしないよう、エリザベスカラーは外さないでください
- 傷口が赤く腫れる、膿が出る、出血するなどの場合はすぐに動物病院へ連絡しましょう
- シャンプーは獣医師の許可が出るまでNGです
カラーを極端に嫌がる子には、傷口を覆うタイプの術後服という選択肢もあります。どちらを使うかは獣医師と相談して決めてください。
食事の管理
術後は食欲が増すことが多いため、この時期に去勢後用フードに切り替えるのがおすすめです。カロリーが控えめで、体重管理がしやすい配合になっています。
去勢手術に関するよくある質問
Q. 去勢すると猫は不幸になる?
人間の価値観で考えると「子孫を残せないのはかわいそう」と思うかもしれません。しかし、猫は「子どもを持ちたい」という意識は持っていません。むしろ、発情のストレスがなくなることで穏やかに過ごせるようになります。
Q. 手術後、性格は変わる?
ホルモンに起因する行動(マウンティング、スプレー、攻撃性)は減りますが、猫の本来の性格は変わりません。甘えん坊な子は甘えん坊のまま、活発な子は活発なままです。
Q. 手術後いつから普通に生活できる?
個体差はありますが、3〜5日程度で元気に動き回るようになることが多いです。ただし、抜糸が済むまでは激しい運動は控えてください。
Q. 室内飼いの1匹だけの猫でも去勢は必要?
繁殖のリスクがなくても、スプレー行動や鳴き声の問題、病気の予防の観点から去勢手術は推奨されます。発情期のストレスは猫にとっても辛いものです。
去勢手術について詳しく知りたい方は、公益社団法人 日本獣医師会の公式サイトも参考にしてください。また、公益財団法人どうぶつ基金では、不妊去勢手術の助成情報なども公開されています。
まとめ:去勢手術は猫との暮らしを良くするための選択
去勢手術のメリット・デメリットをまとめます。
メリット
- スプレー行動・攻撃性の軽減
- 脱走リスクの低下
- 精巣腫瘍などの病気予防
- 発情期の鳴き声・ストレスの解消
- 不幸な命を増やさない
デメリット
- 太りやすくなる(食事管理で対応可能)
- 全身麻酔のリスク(健康な猫なら極めて低い)
- 手術費用がかかる
- 繁殖ができなくなる
総合的に見ると、繁殖の予定がないならメリットのほうが大きいといえます。迷っている方はまずかかりつけの獣医師に相談してみてください。

※この記事は記事執筆時点の情報に基づいています。手術費用や助成金の有無は地域や動物病院によって異なります。手術の判断は必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
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