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猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)とは?
FIPは「Feline Infectious Peritonitis」の略で、日本語では猫伝染性腹膜炎と呼ばれています。猫腸コロナウイルスが体内で突然変異を起こすことで発症する病気で、かつては「不治の病」とされていました。
しかし近年、抗ウイルス薬の研究が進み、治療の選択肢が広がっています。この記事では、FIPの症状、診断方法、治療法、費用について、最新の情報をもとに詳しく解説します。

FIPの原因
猫腸コロナウイルスとの関係
FIPの原因は、猫腸コロナウイルス(FECV)が体内で突然変異を起こし、FIPウイルス(FIPV)に変化することで発症します。猫腸コロナウイルス自体は多くの猫が保有しており、通常は無症状か軽い下痢を起こす程度です。
しかし、ストレスや免疫力の低下などの要因が重なると、ウイルスが変異してFIPを発症する場合があります。
感染しやすい猫の特徴
FIPはあらゆる年齢の猫で発症する可能性がありますが、以下のような条件に当てはまる猫は発症リスクが高いとされています。
- 生後3か月〜3歳の若い猫
- 多頭飼育環境にいる猫
- 保護施設やブリーダーから来た猫
- ストレスの多い環境にいる猫
- 免疫力が低下している猫
多頭飼育でも、それぞれが1匹で落ち着ける場所を確保しておくと、環境によるストレスを減らしやすくなります。
FIPウイルスは猫から猫への直接感染はしないとされています。猫腸コロナウイルスは感染しますが、FIPウイルスへの突然変異は個々の猫の体内で起こるものです。
FIPの症状
FIPは大きく分けて「ウェットタイプ(滲出型)」と「ドライタイプ(非滲出型)」の2つのタイプがあります。
ウェットタイプ(滲出型)
腹腔や胸腔に液体(腹水・胸水)が溜まるのが特徴です。以下のような症状が見られます。
- お腹が膨らむ(腹水)
- 呼吸が苦しそう(胸水)
- 発熱(39.5度以上の持続的な発熱)
- 食欲低下
- 体重減少
- 元気がなくなる
ドライタイプ(非滲出型)
体液の貯留は見られず、臓器に肉芽腫(にくがしゅ)と呼ばれる炎症性の塊ができるタイプです。症状は侵される臓器によって異なります。
- 眼の炎症(ぶどう膜炎)
- 神経症状(ふらつき、痙攣)
- 肝臓や腎臓の機能障害
- 持続的な発熱
- 体重減少
ドライタイプはウェットタイプに比べて診断が難しく、発見が遅れる傾向があります。

FIPの診断方法
FIPの確定診断は非常に難しいとされています。以下の検査を組み合わせて総合的に判断するのが一般的です。
血液検査
血液中のタンパク質の比率(A/G比)や、炎症マーカー(SAA、AGPなど)を測定します。A/G比が0.6以下の場合、FIPの可能性が高いとされています。
抗体検査
猫コロナウイルスの抗体価を測定しますが、腸コロナウイルスとFIPウイルスの区別ができないため、単独では確定診断にはなりません。
腹水・胸水の検査
ウェットタイプの場合、腹水や胸水を採取して分析することで診断精度が上がります。特徴的な黄色い粘り気のある液体であれば、FIPの可能性が高まります。
PCR検査
ウイルスの遺伝子を検出する検査です。確定診断に近い精度がありますが、検査結果が出るまでに時間がかかることがあります。
FIPの治療法
抗ウイルス薬による治療
かつては対症療法しかなかったFIPですが、近年は抗ウイルス薬の研究が大きく進歩しています。
GS-441524やモルヌピラビルといった抗ウイルス薬が注目されており、多くの動物病院で治療に使用されるようになっています。
特にモルヌピラビルは比較的安価で入手しやすく、FIP治療の選択肢として広がっています。投薬期間はおおむね84日間(12週間)が標準的です。
対症療法
抗ウイルス薬と並行して、以下のような対症療法が行われることがあります。
- 腹水・胸水の抜去
- 抗炎症剤の投与
- 栄養サポート(点滴や強制給餌)
- 免疫調整療法
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FIPの治療費用
FIPの治療費用は、使用する薬剤や治療期間、動物病院によって大きく異なります。
- モルヌピラビル:薬代は比較的安価で、検査費用などを含めた総額は10〜20万円程度に収まるケースもあります
- GS-441524製剤:薬代が高額になることが多く、12週間の治療で総額60万〜120万円程度かかる場合があります
- 術前検査・定期検査費用:血液検査などの費用が別途かかります
費用は病院によって差があるため、事前に見積もりを確認しておくことをおすすめします。
FIPの治療で知っておきたいこと
治療期間について
抗ウイルス薬による治療は、一般的に84日間(12週間)の投薬が標準的なプロトコルとされています。この期間中は毎日決まった時間に薬を投与する必要があります。
治療期間中は定期的に血液検査を行い、治療の効果を確認します。症状の改善が見られれば投薬を継続し、問題がなければ84日間で終了するのが一般的です。
治療中の注意点
- 薬の飲み忘れがないよう、アラームやカレンダーで管理する
- 定期的な通院を欠かさない
- 猫の食欲や元気の変化を毎日記録する
- 他の猫がいる場合はストレスを最小限にする
体重も一緒に記録しておくと、通院時に変化を伝えやすくなります。
治療終了後の経過観察
投薬終了後も、3か月〜半年程度は経過観察が必要です。再発がないことを確認するために、定期的な血液検査を受けることが推奨されています。再発の兆候が見られた場合は、速やかに再治療を検討します。

FIPの予防はできる?
FIPに対する確実な予防法は、記事執筆時点では確立されていません。しかし、以下のような取り組みが発症リスクを下げるとされています。
- ストレスの少ない環境を整える
- 多頭飼育の場合はトイレを十分に用意する(猫の数+1個が理想)
- 定期的な健康診断を受ける
- 栄養バランスのよい食事を与える
- 新しい猫を迎える際はウイルス検査を行う
- 生活環境を清潔に保つ
毎日の食事は、年齢に合った総合栄養食を基本にするのが選びやすい方法です。
多頭飼育での注意点
猫腸コロナウイルスは糞便を介して感染するため、多頭飼育環境では感染が広がりやすくなります。トイレの数を十分に確保し、こまめに掃除することが予防につながります。
新しい猫を迎える際は、一定期間の隔離とコロナウイルス抗体検査を行ってから先住猫と合流させるのがよいです。
FIPに関するよくある質問
Q. FIPは他の猫にうつる?
FIPウイルスそのものは直接伝染しないとされています。ただし、原因となる猫腸コロナウイルスは感染力があるため、多頭飼育環境ではコロナウイルスの感染自体には注意が必要です。
Q. FIPと診断されたらどうすればいい?
まずは信頼できる獣医師と治療方針を話し合いましょう。抗ウイルス薬による治療が可能な動物病院を探すことが重要です。FIPの治療経験が豊富な病院に相談することで、より適切な治療を受けられる可能性が高まります。
Q. FIPは治る?
抗ウイルス薬の登場により、寛解(症状が消失した状態)に至るケースが増えています。早期発見・早期治療が回復への鍵です。ただし、すべてのケースで効果があるわけではなく、病型やタイミングによって結果は異なります。
Q. FIPのウェットタイプとドライタイプではどちらが深刻?
一般的にドライタイプのほうが進行が緩やかですが、神経症状を伴う場合は予後が厳しいこともあります。ウェットタイプは腹水・胸水の貯留が急速に進むため、早期の治療開始が重要です。どちらのタイプであっても、早めに獣医師に相談することが大切です。
Q. 猫コロナウイルスの抗体検査で陽性だとFIP?
抗体検査で陽性であっても、それは猫腸コロナウイルスに感染したことを意味するだけで、FIPを発症しているとは限りません。猫腸コロナウイルスは多くの猫が保有しており、そのうちFIPに進行する猫はごく一部です。抗体価が高いからといって過度に心配する必要はありませんが、他の症状がある場合は詳しい検査を受けましょう。
Q. ペット保険でFIPの治療費は補償される?
ペット保険の種類やプランによって異なります。FIPの治療が補償対象に含まれるかどうか、事前に保険会社に確認しておくとよいです。

まとめ
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫にとって深刻な病気ですが、近年の抗ウイルス薬の進歩により治療の可能性が広がっています。ウェットタイプとドライタイプの症状を理解し、早期発見に努めることが重要です。
治療費用はモルヌピラビルの普及により以前よりも抑えられるようになってきています。愛猫の日頃の体調変化に気を配り、少しでも異変を感じたら早めに獣医師に相談しましょう。
外部参考サイト:日本猫医学会(JSFM)、世界小動物獣医師会(WSAVA)、動物再生医療センター病院 FIP解説
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