犬を初めて飼うとき、多くの方がぶつかる壁が「しつけ」です。「おすわりってどうやって教えるの?」「トイレを覚えてくれない」「吠えるのをやめさせたい」――こんな悩みを抱えている方は非常に多いのではないでしょうか。
しかし安心してください。犬のしつけは、正しい方法を知っていれば誰でも実践できます。大切なのは「叱る」のではなく「褒めて伸ばす」こと。この基本さえ押さえれば、初心者の方でもしっかり成果を出すことができます。
この記事では、初心者でも実践できるしつけの基本を、具体的な手順付きで解説します。基本のコマンド5つから問題行動の対処法まで、犬のしつけに必要な知識をこの1記事にまとめました。
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しつけを始める前に知っておくべき3つの原則
原則1:褒めて伸ばす(正の強化)
現在のしつけの主流は「正の強化」と呼ばれる方法です。良い行動をしたらすぐにご褒美(おやつ、褒め言葉、撫でる)を与えて、「この行動をすると良いことがある」と犬に学習させるやり方です。
昔ながらの「叱る」「罰を与える」方法は、犬に恐怖心やストレスを与えるだけで、信頼関係を壊す原因になります。叱ってしつけるのは百害あって一利なしです。これだけは覚えておいてください。
原則2:タイミングが命
犬は「今この瞬間」の行動と結果を結びつけて学習します。だからこそ、良い行動をした直後(1〜2秒以内)にご褒美を与えることが非常に重要です。
5分後に褒めても、犬は何を褒められているのか理解できません。同じように、トイレの失敗を後から叱っても意味がありません。タイミングがすべてと考えてください。
そのためには、おやつをすぐ取り出せる状態にしておくことが地味に効きます。腰に付けられるトリーツポーチを使っている飼い主さんも多いです。

原則3:短く・楽しく・繰り返す
犬の集中力は長くて5〜10分程度です。だらだら長くトレーニングするよりも、1回5分を1日3〜4回繰り返す方が効果的です。しかも楽しい雰囲気で行うことが大切です。飼い主がイライラしていると犬にも伝わるため、お互いに楽しめる範囲で取り組みましょう。
基本のしつけ5つ|具体的な教え方
1. おすわり(Sit)
すべてのしつけの基本中の基本です。おすわりができると、興奮したときに落ち着かせたり、散歩中に信号待ちをさせたりと、さまざまな場面で役立ちます。
教え方:
1. おやつを手に持って犬の鼻先に見せる
2. おやつを犬の頭の上にゆっくり動かす
3. 犬が頭を上げておやつを追うと、自然とお尻が地面につく
4. お尻がついた瞬間に「おすわり!」と声をかけ、すぐにおやつをあげる
5. 繰り返すうちに「おすわり」の言葉だけでできるようになる
コツは、おやつの動かし方です。犬の頭の少し後ろ側に動かすイメージで行います。最初は偶然でも構わないので、お尻がついた瞬間を見逃さずに褒めてあげてください。
ご褒美には、小さくちぎれて何度でも与えられるしつけ用のおやつが向いています。
2. 待て(Stay)
おすわりの次に覚えさせたいのが「待て」です。ごはんの前だけでなく、ドアの開け閉め、散歩中の飛び出し防止にも使える大事なコマンドです。
教え方:
1. まず「おすわり」をさせる
2. 手のひらを犬に向けて「待て」と言う
3. 最初は1〜2秒待てたらすぐにおやつをあげる
4. 少しずつ待つ時間を延ばしていく(2秒→5秒→10秒→30秒)
5. 時間が延びてきたら、少しずつ距離も取ってみる
最初から長時間待たせるのは絶対に避けてください。失敗体験を積ませると学習効果が下がります。「短い時間→褒める」を繰り返して、成功体験を積み上げることが大切です。

3. おいで(Come / ここ)
呼んだら来る――これは安全面で最も重要なしつけかもしれません。ドッグランでの呼び戻し、脱走時の回収、危険な場所からの退避など、命を守るコマンドとも言えます。
教え方:
1. 最初は短い距離(1〜2m)から
2. おやつを見せながら「おいで!」と明るい声で呼ぶ
3. 犬が来たら大げさに褒めて、おやつをあげる
4. 少しずつ距離を延ばしていく
5. 室内で完璧にできたら、庭→公園と場所を広げる
屋外で距離を取って練習するときは、安全のためにロングリードを付けたまま行うのが基本です。
「おいで」で呼んでおいて叱るのは絶対NGです。犬が「呼ばれたら叱られる」と学習して、二度と来なくなります。「おいで」は常にポジティブな体験として教えましょう。
4. 伏せ(Down)
カフェやレストランで足元に伏せて待てるようになると、愛犬と一緒に外出できる範囲がグッと広がります。落ち着きのある犬に育てるためにも重要なコマンドです。
教え方:
1. まず「おすわり」をさせる
2. おやつを握った手を犬の鼻先から地面にゆっくり下ろす
3. 犬がおやつを追って伏せの姿勢になったら「伏せ!」と声をかける
4. すぐにおやつをあげて褒める
5. 繰り返して定着させる
コツは、おやつを地面に向かって真下に下ろし、そのまま少し手前に引くイメージで動かすことです。犬が自然と前足を伸ばして伏せの姿勢になります。
5. トイレトレーニング
最も早く覚えてほしいのがトイレです。失敗が続くとお互いストレスになるため、正しい方法でスムーズに覚えてもらいましょう。
教え方:
1. トイレシートを敷いたトイレスペースを用意
2. 起きた直後、食後、遊んだ後にトイレに連れて行く
3. トイレでできたら大げさに褒めておやつをあげる
4. 失敗しても絶対に叱らない。黙って片づける
5. 成功率が上がってきたら、トイレの場所を固定していく
トレーニング中は交換の回数が増えるので、ペットシーツはまとめ買いしておくと気持ちがラクになります。
トイレトレーニングの成功の鍵は「成功する環境を作ってあげること」です。広い部屋に放してトイレに行くのを待つのではなく、トイレに行きたくなるタイミングで連れて行って、成功させてあげるのが近道です。

よくある問題行動への対処法
無駄吠えへの対処
犬が吠えるのには必ず理由があります。「要求吠え」「警戒吠え」「不安吠え」「興奮吠え」など原因を見極めることが大事です。
要求吠え(ごはん・散歩を催促):吠えている間は要求に応えないのが鉄則です。静かになったらすぐに褒めます。「吠えても無駄」「静かにしたら良いことがある」と学習させましょう。
警戒吠え(インターホン・来客):インターホンが鳴ったら「おすわり」させておやつを与えます。「インターホン=おやつタイム」と関連づけることで、吠えの代わりにおすわりするようになります。2週間程度の継続で効果が見え始めるケースが多いです。
甘噛みへの対処
子犬の甘噛みは歯の生え替わりによるかゆさが原因のことが多いですが、放っておくと成犬になっても噛む癖が残ることがあります。
対処法:噛まれたら「痛い!」と短く言って遊びを中断します。30秒ほど無視して、落ち着いたらまた遊びます。「噛んだら楽しいことが終わる」と学習させましょう。噛んでいいおもちゃ(ガムやロープ)を用意しておくのも効果的です。
飛びつきへの対処
飼い主が帰宅したときに飛びつく犬は多いですが、来客やお年寄り・子供に飛びつくと危険です。
対処法:帰宅時に犬が飛びついてきても無視します。4本足が地面についたら褒めておやつを与えます。「飛びつかない方が良いことがある」と教えましょう。家族全員が同じ対応をすることが成功のポイントです。

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しつけで困ったときの対処法
全然覚えてくれないとき
・ご褒美の価値を上げてみる(いつものおやつ→特別なおやつ)
・トレーニングの時間を短くする(3分でもOK)
・環境を変える(刺激が少ない静かな部屋で)
・ステップを細かく分ける(一気に教えようとしない)
プロに相談するタイミング
以下のような状況になったら、ドッグトレーナーへの相談を検討してください。
・噛みつきがエスカレートして血が出るレベルになった
・攻撃性が見られる(唸る、本気で噛む)
・分離不安が深刻(留守番中に自傷行為、破壊行為)
・自分でのしつけに限界を感じた
プロのドッグトレーナーに相談するのは「しつけの失敗」ではありません。むしろ、犬と飼い主の関係をより良くするための前向きな行動です。
しつけに役立つおすすめグッズ
クリッカー:「カチッ」という音で正しい行動を瞬時にマークできます。タイミングの精度が上がる定番ツールです。
トリーツポーチ:腰に付けるおやつ入れです。すぐにおやつを取り出せるので、褒めるタイミングを逃しません。
知育トイ(コング等):中におやつを入れて遊ぶおもちゃです。留守番時の退屈防止にも役立ちます。
ロングリード:「おいで」の練習に最適です。安全に距離を取ってトレーニングできます。
留守番中の退屈対策には、おやつを詰められる知育トイが定番です。

まとめ:しつけは犬との「コミュニケーション」
しつけと聞くと「犬を従わせること」というイメージがあるかもしれませんが、本質は犬とのコミュニケーションです。「こうしてくれると嬉しいよ」「それは困るな」を伝え合う作業であり、信頼関係を築くプロセスでもあります。
焦らず、叱らず、楽しみながら取り組めば、愛犬は必ず応えてくれます。しつけを通じて信頼関係が深まると、愛犬との生活がもっともっと楽しくなるはずです。
参考リンク:
環境省 動物愛護管理室
一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)
公益財団法人 日本動物愛護協会
※記事執筆時点の情報です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
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